バカでスケベで三枚目、でも実はチョット良い奴・アンパンと、頭が良くて学校一の美少女みるくとの切なくも甘酸っぱいラブコメ漫画。
それが『CHI・GU・HA・GU』です。
では、『CHI・GU・HA・GU』のレビュー第2弾ということで、私の好きなストーリーを交えつつ、ちょっと懐かしくも微笑ましいふたりの物語を紹介していきます。
微妙な距離感
アンパンのおじいさんの粋な計らいで、家政婦として訪れるようになった三ツ矢みるく。
ふたりは相思相愛なのですが、照れ屋で不器用なアンパンの性格もあり、あと一歩のところで関係が進展しません。
ですが、徐々に距離感が近づいていき、最近では結構いい雰囲気になることもチラホラ…。
そんなこともあり、学校にいる時も、みるくはアンパンに積極的に話しかけます。
しかし、周囲の目が気になるアンパンは、学園一の美少女とベタベタすることに抵抗を覚えます。
なので、照れ隠しも手伝い、ついつい素っ気ない態度を取ってしまうのです。
アンパンは「女ってのはよくもまあ…どうして人前でベタベタしたがるのかね…しかも、自分が学校中の注目の的なのを、なんで理解しないんだ」とよく嘆いているのですが、モブキャラの私には痛いほどアンパンの気持ちが分かります。
それほどイケメンではない自分が、超絶美少女と一緒にいることへの世間の突き刺さるような冷たい視線。
さらに押し寄せる、男どもの殺気立つジェラシー。
不器用な昭和の男・アンパンなので、もう少しご配慮いただければと思うのですが、年頃の少女には無理なのかもしれません。
まあ、このように両人はすれ違ってしまうわけなんです…。
折悪く、そんなタイミングで、みるくは風邪をひき寝込んでしまいます。
独り暮らしのみるくは、昔お父さんと喧嘩したときのことを思い出しました。
みるく曰く、変わり者で偏屈なお父さんは、ご飯も食べさせてくれません。
お腹が減って眠れないみるくは、夜中にそっと台所に向かいます。
すると、テーブルの上に、今にも崩れ落ちそうなボロボロのおにぎりが2つ置いてありました。
それは、娘を心配する父が慣れない手つきで握ったおにぎりでした。
Sleeping Beauty
みるくが体調を壊し学校を休んだことを知り、アンパンは素っ気ない態度を取ったことを気に病みます。
ですが、お見舞いの花束を買おうにも貧乏人のアンパンには先立つものがありません。
そうこうするうち、アンパンは心配なあまり、思い切ってみるくの家を訪ねます。
アンパンの突然の訪問に喜ぶみるく。
でも、少しだけ寂しさも隠せまん。
「嬉しいな…嫌われたと思ったから…」
「ごめん…」
チクリと胸の痛みを感じるアンパン。
そんなアンパンに、みるくは自分の気持ちを打ち明けます。
「私…アンパンと出会わなかったら…東京に帰ってたかもしれない。お父さんと…お母さんと…お兄ちゃんがいるものね。アンパンと会わなかったら…学校も辞めちゃって…たぶん、帰ってたと思う」
そう言うと、みるくはスヤスヤと眠りにつきました。
寝息をたてるみるくを少しだけ見守ると、アンパンは黙って帰っていきます。
夜になり、熟睡するみるくの耳元で電話が鳴りました。
目を擦りながら受話器を取ると、どうやら地元の友達からのようです。
しきりに、アンパンの話を訊いてきます。
すると、テーブルの上にアンパンのメモがあることに気付くみるく。
“寝てるから帰る これでも食え!”
そこにはなんと!ボロボロのおにぎりが置いてあったのです。
「アンパン?フフフ…ちょっと変わり者だけど…私は…大好きよ」
友人と電話口で話しながら、アンパンが握ったおにぎりを見つめる、みるくの表情。
その顔は何とも言葉では表現できないものでした。
しかし、これだけは言えるでしょう。
目の前のおにぎりと、かつてお父さんが握ってくれたおにぎりを重ね合わせたのだと。
お金がなく、気の利いたものをお見舞いに持っていくことができなかったアンパン。
でも、普段は作らない不格好でボロボロのおにぎりは、みくるにとって…どんなご馳走や花束よりも嬉しかったに違いありません。
遠い遠い高嶺の花
その日、みるくの買い物の付き合いに、アンパンは駆り出されていました。
面倒くさがるアンパンですが、なんだかんだ言って満更でもなさそうです。
なぜならば、紆余曲折を経て、アンパンとみるくはお互いの気持ちに素直になることができたからでした。
アンパンにとって今でこそ、心理的には別として距離的には近くになったみるくも、出会った当初は高嶺の花でした。
そして、最初の出会いだけは、どうしても忘れていて欲しいと願っていました。
それは、アンパンがスーパーで買い物をしていた時です。
食材の他に「ウルトラHの4月号」をカゴに入れ、レジで会計を済ませようとしました。
ところが、お金が足りず、泣く泣く「ウルトラH」を諦めるはめに…。
すると、後ろからクスクスという笑い声が聞こえて来ます。
振り返ると、そこにいたのは…そう!みるくだったのです!
「ウルトラH」さえ、カゴに入れなければ…痛恨の一撃を食らうアンパン…。
一方、みるくもアンパンとの思い出が甦ります。
それは、高校に入学して間もない頃でした。
ひとり屋上から街並みを眺めていると、アンパンが偶然にもやって来ます。
みるくは東京からひとりで越して来たこともあり、初めての街にまだ慣れていません。
自分が望んだ独り暮らしとはいえ、家族と離れての生活は心細く後悔し始めていました。
そんなみるくに、屋上から街案内をしてあげたのがアンパンだったのです。
ほんの些細な出来事かもしれませんが、アンパンのさり気ない優しさに、みるくはどれほど救われたことでしょう。
きっとその頃から、みるくはアンパンのことを…。
荷物持ちのアンパンの存在をいいことに、大量の買い出しに励むみるく。
両手いっぱいに袋を提げるアンパンは、文句タラタラです。
でも、そんなアンパンを見つめる、みるくの眼差しは幸せいっぱいです。
「フフフ…でも素敵じゃない?新婚さんみたいで…」
「な…」
思わず照れるアンパンに、みるくは言いました。
「ベー!!ウッソだよーん!私の旦那様になる人は、ウルトラHなんて買わないの!」
やっぱり覚えていたのね…みるくちゃん(涙)
ガックリとうなだれるアンパン…。
でも、本心はいつかアンパンと一緒になりたい、みるくなのでした。
そんなみるくを眺めながら、アンパンはしみじみと思います。
遠い遠い高嶺の花 その花の名は三ツ矢みるく
花言葉は「あなたに出会えて幸せです」
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