“下の中”男子とJCギャルの物語「わざと見せてる?加茂井さん。」レビュー

マンガ・アニメ




本作は、陰キャ男子とスクールカースト最上位ギャルのラブコメディです。
まあ、ありがちな設定といえば、そう言えるでしょう。

主人公・須藤靖幸は背も低く運動音痴に加え、漫画を描くことに情熱を燃やす冴えない青春を送っています。
一方、ヒロイン・加茂井由紀はミニスカートが良く似合うJCギャルです。
ですが、明るく朗らかな性格の彼女は陰キャの須藤のことも決して下に見ることはなく、フレンドリーに「ストゥー」と呼ぶ姿からも、人気者なのが頷けます。

そして、そのふたりを中心にクラスメイト達の人間模様が交差していきます。
中学2年生というかけがえのない時をみずみずしく描く青春群像劇に、私は気が付くといつの間にか引き込まれていました。

本稿では、特に印象に残るストーリーを中心にレビューを書き綴ってみたいと思います。

ストーリー

ストゥーこと須藤靖幸は漫画とアニメが大好きな中学2年生。
クラスでは全く目立たない、いわゆるスクールカーストでいうところの“下の中男子”である。

そんな須藤少年が自分の描いた漫画をきっかけに、学校一のミニスカを履きこなすJCギャル・加茂井由紀と話すようになる。
だが、スクールカーストの最上位にいる加茂井さんは、いつもイケてる系の男子とつるむなど雲の上の存在だ。
ところが、徐々に交流を深める二人は、いつしか相思相愛の仲になっていく。

そんな中、加茂井さんの昔からの友人でクラスの“モテモテ男子”リオンこと青木利音が、東京に引っ越すことが決まる。
そのことをきかっけに、クラスメイト達の様々な想いが動き出すのだった。




波紋を呼ぶ青木利音の引っ越し

ときは2学期の終業式、クリスマスイブに事件は起きました。
リオンが加茂井さんに、3年生に上がると同時に引っ越すことを打ち明けます。
ふたりは幼馴染であり、最も親しい友人でした。
いや、長らく友人以上恋人未満の関係だったといえるかもしれません。
ですが、その時のやり取りが尾を引き、二人の間に気まずい空気が流れてしまいます。

3学期に入ったある日、家庭科の授業で調理実習が行われていました。
“委員長”こと学級委員長の大原佳代子は、オムライス作りに精を出しています。
なぜならば、大好きなリオンに食べてもらえる機会を得たからです。
ところが、ふとしたことをきっかけにリオンが引っ越すことを耳にします。
ショックのあまり指を切り、病院に行くほどの怪我を負ってしまいます。

学校に戻った委員長は偶然、須藤と会いました。
心配する須藤が発した“下の中男子”というフレーズをきっかけに、委員長は抑えきれぬ想いが込み上げます。

「そういうの…凄く便利だよね…そうやって自分を下に置いておけば、いくらでも言い訳に使えるんだもん。中途半端な私はどっちにも逃げ場がないから正直うらやましい…」

実は“中の上女子”と呼ばれる委員長は、その言葉にとても苦しんでいたのです。
そして、滂沱の涙を流しながら叫びました。

「スクールカーストとか…リア充だとか陰キャとか…そういう言葉…ほんとウゼェ!私たちまだ14年しか生きてないのに、上とか下とか決まっててたまるもんか!」

彼女は涙を拭きながら続けました。

「ごめんね…ごめん。こんなこと…あんたに言っても仕方ないのにね。でも…だから私は諦められないの…」

それから数日後、委員長がリオンに告白し、フラれたことが噂になりました。

リオンはいつも友達に囲まれており、女子にもモテモテの学校の人気者でした。
だからこそ、須藤少年は彼に嫉妬心を抱き、大嫌いな存在だったのです。
でも、やっぱり憧れを隠せない気になる存在でもありました。
“中の上女子”大原佳代子にとってもリオンは憧れの、恋焦がれた存在でした。

等身大の中学生の姿を生き生きと描いたこの話は、とても印象に残ります。
厳然として存在するスクールカーストという事実。
その現実に必死に抗い、行動した委員長・大原佳代子の勇気に胸を打たれます。

ですが、失恋のショックに大原委員長は立ち直ることができませんでした。




水と油のふたりが心通わせた瞬間

授業中は居眠りをし、ミニスカ姿で闊歩するJCギャルの加茂井さん。
かたや、品行方正で真面目を絵に描いたような委員長の大原さん。
ふたりはお互いを苦手とする、水と油のような存在でした。

ですが、ふたりの心が通じ合うシーンを見た私は、本作が単なるラブコメディを超越した珠玉の学園物語だと確信します。

ついに終業式を迎え、リオンが転校する日がやって来ました。
クラスメイトに別れの挨拶をするリオン。
一方、加茂井さんは感情のしこりが残ったままであり、委員長は机に突っ伏し悲しみのオーラを漂わせています。
友人達が校門まで見送りますが、その中に加茂井さんと委員長の姿はありません。
今日の午後4時に、飛行機に乗って去ってしまうというのに…。

内心、須藤はホッとしていました。
加茂井さんに思いを寄せる須藤にとってリオンこそ、恋の最大のライバルだったからです。
でも、彼は悪魔の囁きを振り払い、漢気を見せるのです。

加茂井さんを捜し出すと、リオンの見送りに行くよう諭します。
それでも逡巡する加茂井さんに、須藤は言いました。

「中学2年生の僕らが今、経験している全てのことは…この先もずっと引きずり続けるんじゃないか…だから今行かないと、きっと一生…後悔する!」

その言葉に加茂井由紀は駆け出すと、委員長のもとに行きました。

「飛行機!4時だって!行こう委員長!リオンの見送りに!そりゃ、私は…委員長がどれだけリオンを好きだったか知らないし、フラれてどんな気持ちなのかも分からない。もしかしたら、私から誘われても嫌なのかもしれない!」

そして精一杯、委員長に伝えます。

「でも!私達!今行かなかったらきっと一生…いや死んでからも後悔しちゃう!だって“今”の思い出は“今”しか変えられないんだもん!」

加茂井さんの魂の叫びに委員長は突き動かされ、ふたりはリオンのもとに走り出します。
中学2年生の1年間、水と油の関係だったふたりが今この瞬間、心が通じ合ったのです。

結局、リオンはすでに搭乗に向かってしまい、見送りには間に合いませんでした。
でも、デッキからリオンを見つけることができました。
その後ろ姿に、ふたりは心の底から呼びかけます!
会うことは叶わなかったものの、なぜかふたりは清々しい気持ちに包まれていました。

加茂井由紀は心の中で最愛の人を思い浮かべます。

「あの時、ストゥーが何も言ってくれなかったら…今日の思い出は何も起こらないまま終わっていたはず…」

委員長・大原佳代子はしみじみと感じていました。

「ねえ、加茂井さん…この1年間ずっと、あなたとは“友達になりたい”とも、“友達にならなきゃいけない”とも思っていなかった。だって、あなたは私の好きな人と一番仲が良くて、私なんかよりはるかに上のグループにいる人だったから。でも、あなたは私にとって決して“どーでもいい人”になってくれなくて…今は素直にこう思う。あなたと同じクラスだったこの1年間…あなたがいたから、すごく楽しかった!」


わざと見せてる? 加茂井さん。6 (本作品収録巻)

まとめ

加茂井さんと委員長のふたりは空港への道中、雑談に花を咲かせます。
その中で、加茂井さんの人となりが垣間見える場面がありました。

「私の中で人って、だいたい3つのグループに分かれるの。“友達になりたい人”“友達にならなきゃいけない人”“どーでもいい人”。だけど何より、そうやって人をグループに分けている自分が嫌になる。だから、最後に委員長の友達と仲良くなれて本当に嬉しかった」

とかくスクールカーストの最上位者は中位や下位にいる者など、はなも引っ掛けないことがほとんどでしょう。
でも、加茂井さんは一味違います。
だからこそ、須藤とも分け隔てなく接し、彼の人柄を好きになることができるのです。

本当は主人公の須藤をメインに紹介するべきなのでしょうが、ほとんど出番がなくなってしまいました(苦笑)。
ですが、彼の良さもほんの少しだけご理解いただけのではないでしょうか。

「わざと見せてる?加茂井さん。」。
10代の揺れ動く心理描写が秀逸な本作は、少し甘酸っぱい青春時代を呼び起こすことでしょう。

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