「闇に降り立った天才」赤木しげるの名言 第3局
降臨③『勝負の後は骨も残さない…!』

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ヤクザを前にしても決して揺れぬ心で、“神域の闘牌”を繰り広げる赤木しげる。

13歳とは思えぬ打ち回しは、まさに博打の本質を知り尽くした稀代の勝負師といえるだろう。

前回に引き続き、対矢木戦を紹介する。


アカギ-闇に降り立った天才 2(本作品収録巻)

勝負の後は骨も残さない

一時は矢木にリードを許すも、一瞬の弛緩を突いて逆転トップをもぎ取るアカギ。
これで5連勝を飾り、南郷の借金300万円はチャラになる。
その場にいる誰しもが、狂気の夜は幕を下ろすのだと思っていた。

しかし、ただ一人、勝負を終わらせる気など毛ほどもない男がいた。
その人物こそが、赤木しげるだった。
しかも、チャラになったばかりの南郷の借金300万円を賭けて、矢木とのサシウマを炊きつけたのだ。

「それをそっくりサシウマに乗せて倍プッシュだ」

倍プッシュとは、賭け金を倍にすることである。
普通ならば、命が懸かった勝負ゆえ、借金が無くなったところで手打ちである。
ところが、赤木しげるだけは全く逆の発想をしており、南郷達にその真意を打ち明ける。

「この倍プッシュにプレッシャーを感じているのは、こちらではなく間違いなく向こうだ。ここまでの流れは、とても勝てる流れではないことを相手も分かっている。しかし、侠を売る稼業のヤクザが中学生の挑戦を断れるはずがない。負けるとわかっていながら降りないアホウ。こんな絶好のカモは2度とお目にかかれない」

言うのは簡単だが、これを実践できる者など誰がいよう。
私も麻雀をしていたので分かるのだが、リードしている場面では点棒を失いたくないので安全にいこうとする。
この場合でいえば、自分に追い風が吹き有利であることは自覚できても、せっかく安全圏に入ったこともあり、わざわざイチかバチかの勝負には踏み込めないのが人情である。

それは、なにも麻雀に限ったことではなく、あらゆる競技で見られる人間の心理であろう。
サッカーや柔道などでもリードしながら守りに入り、あっという間に劣勢に立たされるケースを何度見てきたことか。
つまり、安全を求める弱気な心が勝機を遠ざけるのである。

通常、相手を圧倒している場面では自分に流れが来ているのだから、勢いを殺さぬよう守りに入らず戦うことが肝要なのだ。
特に、麻雀のようにツキの有無が勝敗を左右するゲームでは尚更である。
齢13にして、勝負の流れや本質を熟知していることに驚かされる。
しかも、アカギは麻雀初心者なのだ!

そして案の定、相手ヤクザは引くに引けず、アカギの挑発に乗り勝負を続行する。
アカギの言ったとおり、すでに自信を失いかけている矢木はもはやアカギの敵ではなかった。
アカギは、本能的に弱っている人間の狩り方を熟知していた。
心を折られ、幻影に恐怖する矢木は精神が崩壊し、見るも無残な麻雀と化していく。
アカギの一挙手一投足に怯えるあまり、遁走を繰り返すしか術がなくなった。
このとき、矢木の代打ち生命は断ち切られたに違いない。
結局、300万円を賭けた倍プッシュ勝負はアカギの圧勝に終わる。

長い夜が終わり、撤収しようとするヤクザ達。
しかし、再び赤木しげるはそれを拒絶する。

「なに言ってるの?今の300万の勝ちを乗せて倍プッシュ600万のサシ勝負だ!」

動揺を隠せない周囲をよそに、赤木しげるは言葉を継ぐ。

「まだまだ終わらせない…地獄の淵が見えるまで。勝負の後は骨も残さない…!

これが本当に13歳の中学生の言葉だろうか。

赤木しげるは言う。

「やつらが恐れているのは、俺たちの狂気。ブレーキを踏まない心」だと。

このやり取りで、明らかになったことがある。
この博打に参加している者の中で、本当の意味で“身を捨ててこそ”という覚悟を持っていたのは赤木しげる唯一人であったのだ。
そして、唯一、死を恐れない異端者も赤木しげるのみだった…。

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