「闇に降り立った天才」赤木しげるの名言・名場面㉘ 
鷲巣編part13『鷲巣巌 王としての誇り』

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6回戦南3局、海底で鷲巣が切った3枚目の“北”。
安全としか思えぬその牌を、闇に潜む刺客の如く狙い打った赤木しげる。
さすがの“闇の王”鷲巣巌をもってしても、驚天動地の地獄単騎であった。




鷲巣巌 王としての誇り

夢想だにせぬ“北単騎”に鷲巣は動転する。
それはそうだろう。
日の光が射さぬ深海の底の底。
長い年月をかけ、さらにその奥に埋もれた“北”。
本来ならば決して現れぬ運命の地獄牌が、赤木しげるの手牌に潜んでいたのだから…。

發・西・ドラ1に海底がついて、まごうことなき満貫8000点が成就した。
これで鷲巣から800㏄の血液採取が執行される。

「そのままか…陽動作戦ではなく、そのままの北待ち!つまり、二度あがりを見逃して三度目の北に賭けたのか…この土壇場、生と死の狭間で…!ククク…やるのお~っ!アカギ…!惚れ惚れするわ!この命知らずめっ!!」

鷲巣は、赤木しげるの修羅の鬼博打に心底感嘆した。
そして負けを認める代わりに、醜態をさらしながら血液採取を阻止せんとする部下を一喝する。

「バカなことを言うなっ!!免除?終了?なにをたわけたことを貴様らは!ここで、わしがもし最初の取り決め通りに血を抜かなければ、それによってまさにわしは死ぬのだ!ここで取り決めを反故する男、そんな者が鷲巣巌であるわけがない!抜けっ!抜くのだ!わしの血を!」

王としての威厳、そして何よりも誇りを取り戻したかのような鷲巣の言葉。
不覚にも、私は鷲巣巌の潔さ、気高さに心震わせた。
鷲巣にこのような感情を抱いたのは初めてだ。
死という命の定めを恐れるあまり、若さに嫉妬し、狂の世界の住人と化した鷲巣。
この老醜を絵に描いた金と権力の亡者が虚心坦懐に赤木しげるを認め、そして死神が鎌首をもたげる血液採取を躊躇わず命じたのである。

 振り返れば鷲巣もまた、アカギ同様“他人から理解されぬ者”として人生を歩んで来た。
死を恐れぬ揺れない心と悪魔のような人心操縦術をもってして、博打の深淵に身を投じる赤木しげる。
誰よりも見えざる者の寵愛を受け、どんな修羅場でも決して尽きぬ豪運と異端者の嗅覚でねじ伏せてきた鷲巣巌。
ベクトルは違えども、人智を超えた“人外”の存在として生を受けた宿命のふたり。
このふたりに共通するもの…それは起きた結果に対しては、たとえ己の命を懸けても殉じようとする魂の存在だろう。
鷲巣は勝利の可能性を高めるためには、なりふり構わず見苦しいまでの主張をする。
しかし、それは過程の話である。
だからこそ、きっと赤木しげると鷲巣巌は互いに、これまでの人生で感じることのなかった同じ匂いを嗅ぎ取っていたに違いない。




理解されぬ者たちの邂逅

厳命を受けながらも、長きにわたり鷲巣に仕えてきた部下たちは到底、主の死を受け入れられない。

「鷲巣様のお気持ち、いたいほど分かります。ですが、どうか…どうかお考えを改めてください!」

その刹那、赤木しげるは語りかける。

「鷲巣…!見届けよう!」

そして、真摯な眼差しで言葉を継ぐ。

「そして、帰ってこいっ!残ってるぜ…!まだ南4局が!」

鷲巣巌の胸に残響する言霊。

「待っとれ!必ず…必ずや…復活して逆王手!殺してやる!止めを刺す!貴様の博運、博才を凌駕する…鷲巣力で!」

鷲巣巌は力強く言い返した。
言葉こそ物騒だが、“宿命の強敵”への彼一流の生還の誓いにしか聞こえない。

「抜け!血など空になっても生きてはいけるが、気概を失ってはそれこそ死!」

この気迫、矜持こそ、鷲巣巌を王たらしめる所以だろう。

鷲巣の採血を静かに見守るアカギ。
血を抜かれ、鷲巣は徐々に意識が混濁する。
元々1100㏄抜かれていたところに、老齢の身で800㏄もの大量の血液を一気に抜かれるのだから無理もない。
最後の150㏄を抜き終わると、さすがの鷲巣もこと切れた。
その姿を見届け、赤木しげるはやおら雀卓に上る。
すると、いきなり鷲巣の頭を足で踏み付けた!

「鷲巣っ!分かるか?今、おまえはオレに頭を踏まれている!」

アカギの言葉に、ピクッ!とほんの少しだけ鷲巣の頭が動く。

「フフ…戻ってこい…!戻ってこないと晴らせないぜ!この屈辱、恨み…!」

私はこの赤木しげるの狼藉を見て、言葉を失った。
いや狼藉などではなく、アカギならではのエールにしか思えない。
ここまでして、不俱戴天の仇である鷲巣巌を生還させたいのか…。
誰よりもプライドの高い鷲巣が頭を踏まれる屈辱を受ければ、絶対に許せるはずがない。
鷲巣の自尊心を傷つけ、アカギへの敵愾心を煽り、生への異常なまでの執着心をかき立てようとしたのだろう。

赤木しげると鷲巣巌。
覚悟なき、ぬるま湯の如き凡夫とは真逆の生き方を貫く、理解されぬ異端者たち。
建前や忖度とは最も縁遠い本音で生きるふたりは、誰よりもお互いのことを理解していたに違いない。


アカギ-闇に降り立った天才 28(本ストーリー収録巻)

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