「進撃の巨人」アルミン・アルレルト ~勇敢なる名参謀~

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「進撃の巨人」の主人公はエレンであり、ヒロインはミカサである。
そして、ふたりの親友がアルミンだ。

兵士というには体力不足で、一見すると気も弱い。
だが、作中随一ともいえる頭脳を持ち、ここ一番では命を懸けることも厭わない勇敢さも併せ持つ。

誰よりも輝く瞳で、壁の外の世界を夢見た少年。
そんなアルミン・アルレルトの冒険譚を紹介する。

幼少期

幼なき日、アルミンはいじめられっ子だったが、悪ガキ共から守ったのはエレンとミカサである。
そんな縁もあり、3人は固い絆で結ばれ親友となっていく。
そもそもいじめに遭った原因は、壁の外の世界を描いた本に感化されたことであり、特に海を見ることに憧れた。

ところが、ある日“超大型”巨人と“鎧”の巨人の襲撃により、日常が一変する。
家族を失った幼馴染の三人は避難所で、巨人への復讐を誓う。
そして、12歳になったアルミンはふたりと共に、訓練兵として入隊した。




調査兵団へ

訓練兵時代は体力もなく、特に有望視されていなかったアルミンだが、初めての壁外調査から頭の回転の速さを発揮する。
女型の巨人の強襲に団員達が混乱する中、見事な駆け引きを展開した。
早くも才能の片鱗を見せるアルミン・アルレルト。

同期の兵団員が、秘密裏に“女型”の巨人捕獲作戦を遂行したエルヴィンに不満を漏らす中、アルミンは団長を擁護した。

「何かを変えることができる人がいるとすれば、その人はきっと…大事なものを捨てることができる人だ」

この言葉はアルミンの座右の銘となり、自らが身をもって証明することになる。

私はアルミンの名言で、いたく感銘を受けた言葉がある。

「良い人という言い方は好きじゃない。だって、それって自分にとって都合の良い人のことをそう呼んでいる気がする…そもそも全ての人にとって都合の良い人なんていないだろう」

思わず膝を打つ。
たしかに、どんなに正しくとも、自分にとって都合の悪い人を“良い人”とは呼ばない。
所詮、人間はご都合主義なのを看破したアルミンの慧眼。
目からウロコが落ちるとはこのことだ。

その後も、アルミンは窮地に陥るたび、起死回生の一手で仲間を救っていく。
まさに、調査兵団が誇るブレインといえるだろう。

そんなアルミンは仲間たちと同様、地獄を見続ける。
それは、ジャンが攻撃を受けた場面だった。
咄嗟にジャンを助けるため、敵を撃つ。
ある意味、最も軍人とは遠い存在だった彼が人を殺すという、なんという世界の残酷さ。
その後、ショックのあまり嘔吐するアルミンの姿は、いかに彼が普通の少年なのかを如実に物語る。

さらに、受け入れ難い現実が彼を襲う。
ウォール・マリア最終奪還作戦にて“超大型”巨人を倒すため、自ら囮になり黒焦げ状態になってしまう。
一方で、エルヴィン団長も同じく“獣”の巨人の囮になり、瀕死の危機に陥った。
助けることのできる注射器は1本しかない。
その虎の子の1本を、なんとリヴァイはアルミンに打ったのだ。
盟友にして人類の希望の象徴・エルヴィンではなく…。
そして、巨人となったアルミンはかつての同僚ベルトルトを貪り食い、人間として復活した。
それに加え、エルヴィンの命をも背負うことになり、耐え難き重圧に押し潰されそうになる。

しかし、アルミン・アルレルトは艱難辛苦を乗り越えて、第15代調査兵団長の役目を立派に果たしていった。




勇者

私がアルミンに最も心震わせたのは、前述した“超大型”巨人に立ち向かったときである。
臆病に見えがちなアルミンだが、勇敢なる兵士であることを我々は知ることとなる。
だが、それは同期の支えがあるからだ。

その一端が描かれたのは“超大型”巨人の来襲時の対応だ。
突然の奇襲に浮足立つ104期生の兵士たち。
エルヴィンとリヴァイは“獣の”巨人討伐に向かい、ハンジらは“超大型”巨人の爆風に巻き込まれ、先輩に頼れぬ苦境に立たされる。

指揮命令権を託されたアルミンもまた、他の同期と同じくパニックに陥った。
それはそうだろう。
実戦経験が乏しいにもかかわらず、仲間からリーダーシップと判断を求められるのだから。

一刻の猶予もない中、アルミンはジャンに判断を委ねた。
これは一見すると責任逃れにも映るが、そうではない。
この未曾有の危機に際し、ジャンの方が状況判断能力に勝ることを見抜いたのである。
アルミンの特性は、ピンチを打開するために必要な作戦立案能力だ。
己の分を知り、適材適所の人材登用を図るべく一歩引くことは、我々が思うより見識と勇気がいる。

そして、何よりもジャンの頼もしい姿といったら…。
ギリギリの選択を迫られ、追い詰められるアルミンを頼れる兄貴よろしくサポートする。
その冷静沈着な判断はエルヴィンを想起させるほどだった。

ここに来て絶妙な阿吽の呼吸を見せる二人の同期。
苦楽をともにした仲だからこそ、当意即妙の役割分担ができるのだ。

そして、とうとう万策尽きたかと思われた場面でアルミンは気が付いた。
“超大型”巨人の体が細くなっていることに…。
体が大きい“超大型”巨人はただでさえ燃費が悪いのに、骨格以外の全ての肉を使い熱風を放ち続けていたからだ。
さらに、熱風を放つ間は体を動かせない。
そこに勝機を見出したアルミン・アルレルト。
ただし…自らの命を犠牲にすればだが…。

アルミンは自らの夢を捨て、巨人化したエレンと共に作戦を決行する。
親友の死を覚悟した雰囲気を感じ取るエレン。
一方で、アルミンもエレンの様子から心の動きを察知しこう言った。

「エレン…悪いけど僕は、長年の夢である海を見るまでは死ねない。だから、大事に至らない辺りで切り上げるから…後は任せたよ。ほら、僕ってそんな…勇敢じゃないから…」

もちろん、エレンは知っていた。
アルミンという男は幼い頃から決して逃げず勇敢だったことを!

アルミンは続けた。

「エレン…分かってるよね?一緒に海に行くって約束しただろ!僕がエレンに嘘ついたことあった?だから何があっても約束守ってくれよ」

次の瞬間、エレンはよろめき壁から転落した。
“超大型”巨人から受けた一撃のダメージが残り、脳震盪を起こしたようだ。
“超大型”巨人ベルトルトもそう確信し、アルミンに強烈な熱風攻撃を仕掛ける。
だが、アルミンは高温に焼かれながらも、ベルトルトに反撃する。
体だけでなく肺も焼かれ、呼吸さえできないアルミン。
これ以上は危険だが、アルミンは怯まず“超大型”巨人にアンカーを突き刺したまま離れない。

「まだ離すな!エレンに託すんだ!僕の夢、命、全てを!僕が捨てられるものなんてこれしかないんだ…きっとエレンなら海にたどり着く!僕の代わりに海を見てくれる」

アルミンが燃え尽きたとき、“超大型”巨人のうなじをエレンが斬り裂いた!
実はエレンが転落したのは敵を油断させるためのフェイクであり、エレンが巨人を硬質化させ欺く時間をアルミンが稼いだのである。
つまり、巨人の体から脱出したエレンがベルトルトの虚を突いて倒すという作戦を、アルミンは瞬時に思い付き実行したということだ。

私はアルミンの一連の行動に、先で述べた彼の言葉を思い出す。

「何かを変えることができる人がいるとすれば、その人はきっと…大事なものを捨てることができる人だ」

まさに、アルミン・アルレルトのことではないか!
耳ざわりの良いことを口にするのは容易いことだ。
だが、それを実行することの何と難しいことか。
しかも、アルミンは最も大切な自らの生命を賭したのである。
積年の夢とともに…。

兵士とはいえ、15歳の少年の勇気に言葉もない。


進撃の巨人 20 (本ストーリー収録巻)

まとめ

リヴァイの選択により、調査兵団長ではなく自らが生き永らえたアルミン。
エルヴィンという代替のきかぬ存在の代わりに、自分が選ばれた重すぎる事実を受け入れることなどできようか。

だが、「勇者」アルミンは逃げることなく、受け継がれた調査兵団の魂を胸に最後まで職責を全うした。

卓越した頭脳を駆使して、数々の窮地から仲間を救ったアルミン・アルレルト。
しかし、むしろ私は彼の勇敢なる姿に深い感銘を受けるのだ。

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