「闇に降り立った天才」赤木しげるの名言・名場面⑳ 
鷲巣編part5『見える者と見えざる者』

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鷲巣は5回戦の開始前、部下にも隠していた1億円を補充する。
これで持ち金が約3億に復活する鷲巣。
虎の子の資金が溶けきるまでに、眼下の悪魔の血液をあと600㏄奪えば勝ちとなる。

だが、一般的な天才などという言葉では計れない神域の闘牌を見せられ、さすがの鷲巣巌も赤木しげるを認めざるをえない心境に至っていた。

5回戦開始

天啓

5回戦が始まり、東1からいきなり3局連続リーチで攻める鷲巣。
アカギからの出あがりなど目もくれず、ひたすらツモあがりを目指すも、アカギに巧みに捌かれてしまう。

仰木らアカギ陣営には、このまま一気にアカギに流れが傾くと楽観ムードが漂っている。
だが、ただ一人、赤木しげるのみが波乱の気配を嗅ぎ取っていた。

アカギが親番を迎えた東4局。
序盤こそ軽い手が入ったアカギが先行するものの、鷲巣も執念でテンパイを入れ返す。
ところが、鷲巣は場の鼓動に耳を澄ませ、リーチを自重する。
そして終盤、安岡から出たあがり牌を敢えてカンするという、一見すると意味不明な悪手に打って出る。

ちなみに手牌は、【東東⑤⑤⑤六六六七八八八九】と東と八萬待ちとなっていた。
この聴牌から八萬が出たのに三暗刻をあがらず、カンをしたのだ!

しかし、これこそが人智を超えた何者かと繋がる鷲巣にしかできぬ一打となり、アカギを追い詰める。
鷲巣はリンシャンから三萬を引き、打ち九万とし聴牌を崩す。
そして、部下から出た六萬をまたもやカンすると、リンシャンから五萬を持ってくる。

あっという間に【東東⑤⑤⑤三五 明槓→六六六六 八八八八】の形で復活したではないか!
しかも、部下に七萬をポンさせたことにより、海底が鷲巣にずれたのだ。
まさに“巨魁”鷲巣巌に訪れた天啓であった。




致命的ミス

残り巡目も僅かの局面で見せた、鷲巣巌の驚異の闘牌。
あがり牌の四萬はまだ3枚も残っていた。
その場にいる誰もが、鷲巣の海底ツモを予感する。

だが、赤木しげるのみが、魔物の異臭が醸し出す強烈な磁場を跳ね返そうとしていた。
とはいえ、その手牌はバラバラである。
残る手段は、聴牌している安岡への差し込みだけである。
安岡のあがり牌の二・五筒は、残り12枚中2枚しかない。

「ククク…鷲巣…死んだ手だろ!?一度死んだ手を甦らせ…ウロウロされちゃ迷惑だ…!戻ってろ…墓に…!」

赤木しげるはそう言うと、引いてきた二筒を捨て牌に叩き切る。
まさに起死回生の差し込み…となるはずだった。

肝心の安岡は手牌を倒さず、逡巡している。
鷲巣陣営のカンによりドラが6つ乗り、平和、一盃口とあわせ倍満になっていたのである。
いくら血液採取は逃れるとはいえ、あがれば残り4局でアカギはラスに転落してしまう。
おまけに、当面の敵・鷲巣にも約9000点もの差を付けられるのだ。

その瞬間、安岡にも天啓が舞い降りた。
アカギの二筒をあがらずチーすれば、鷲巣の海底をずらせるのである。
役無し聴牌の鷲巣は、海底ツモでしかあがれない。

勇躍、「チーッ…!」と鳴きを入れる安岡に、赤木しげるは呟いた。

「悪手だ…しちゃいけない鳴き…!渡してはいけなかった。今は鷲巣に機会を…!」

所感

巷間、「生兵法は怪我のもと」という台詞を耳にする。
これは、ちょっと齧った自称中級者が賢しら顔をして、でしゃばっては取り返しのつかないミスをするという意味である。
まさしく安岡のチーは、この言葉を彷彿とさせた。

あがり牌の二筒が放たれ、鷲巣の悪魔の囁きに懊悩する安岡にアカギは言った。

「惑わされるな…!悪魔の甘言に!今、肝心なことは完全なる遮断…閉めるんだ!魔物が大挙して這い出ようとする魔孔を…!渡しちゃいけない…今鷲巣にツモを…!」

だが、安岡は凡人にありがちな浅知恵で、アカギの忠告を無視した。

この後も、安岡はアカギの足を引っ張り、窮地に追い込む愚を犯す。
思えば、悪徳刑事・安岡はいつも目先の利を優先し、欲望に振り回されて生きてきた。
凡夫は凡夫らしく、“神域の男”の判断に沿えばいいものを…。
少しばかり頭が回る凡夫ほど、厄介な者はいない。

会心のチーだと歓喜する安岡と仰木に、赤木しげるは呟いた。

「海底のあがりは表の顔…あの手にはもう一つ裏の顔がある…!そして真に恐ろしいのは…その裏の顔…!」

間もなく、その言葉の真意を知る安岡だった…。


アカギ-闇に降り立った天才 13(本作品収録巻)

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