「マスターキートン」~人生の達人が紡ぐ大人の寓話~①『作品紹介』

マンガ




「MASTER OF LIFE(人生の達人)」という響き。
人生の経験を積み重ねてきた大人たち、特に男性は、ある種の憧憬を抱くのではないだろうか。

仕事と家庭、そして雑事に追われる日々。
いつの間にか自分らしさを失っていることに、ふと気付く。
そんな時、自分のライフスタイルを持つことに憧れる。

本作品の主人公の平賀=キートン・太一も、我々と同様に多忙な日常を送っている。
だが、決して自らの夢を諦めず、その実現に向けて奔走する。

そんな彼が、ある時は事件に遭遇し、そこで織り成す人間模様をヒントに全容を解き明かしていく。
またある時は、キートンが脇役に回り、登場人物たちが人生の機微に触れる物語を紡いでいく。
このように「MASTERキートン」は、齢を重ねた大人だからこそ心に染みる名言や名場面が数多く登場し、読了後に深い余韻を残していく。

本作品の作者は“現代の漫画界の匠”浦沢直樹であり、基本的には1話完結のストーリー仕立てで展開する。


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平賀=キートン・太一とは

主人公・平賀=キートン・太一は一見すると優男で、通勤電車に揺られている何の変哲もないサラリーマンにしか見えない。
事実、物腰も柔らかく、「Noといえない日本人」の典型のような彼は、無理難題を押し付けられる場面にもたびたび遭遇する。

実は、このキートン。
その風貌からは想像もできない経歴の持ち主なのだ。

日本人の父とイギリス人の母を持つ彼は名門オックスフォード大学に進学すると、大恋愛の末に学生結婚し、一人娘を授かる。
元来、奥手の彼だけに驚きを禁じ得ない。
その後、妻にふられて離婚する。
しかも、かなりの時間が経つというのに、未だ妻を想い続けているのだ。

そして、彼は妻との破局をきっかけに、イギリス陸軍の特殊部隊であるSAS(英国陸軍特殊空挺部隊)に入隊した。
そこで、彼は伝説的マスターとして名を轟かしたほどの腕利きという一面も持つ。

現在は、業界でも指折りの大手、ロイズ保険会社のオプ(保険調査員)として多忙な日々を送っている。
しかし、キートンが本当に目指しているのは、考古学者なのである。
オックスフォード大学時代の恩師に影響を受けた彼は、これまでの定説を覆す大胆な仮説を唱え、いつかそれを証明したいと思っている。

かつてのドラマ「七つの顔の男」ではないが、キートンは異色の経歴に彩られた複数の顔を持つ男なのであった。

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人生の原点

過ぎ去りし少年時代の、あるバス運転手との出会い。
それこそが、キートンの人生の指針となる。

キートンは両親が離婚し、母の祖国イギリスに来ていた。
ひとり、寂しさを胸に抱えるキートンは地元の子どもたちにいじめを受けるなど、鬱屈した日々を送っている。
また、その運転手も妻と離婚し、上手くいかない日常を過ごしていた。

そんな中、邂逅を果たし、年齢の壁を越えて友となるふたり。
ある日、運転手は、とっておきの絶景スポットにキートンを連れていく。
そこから見えたのは、キートンが見たこともない美しい海。
その海の色は只の緑色ではなく、瑪瑙(めのう)色の輝きだった。

運転手は海を見つめながら言った。
「俺たちは瑪瑙色の時を共有している」

そして、キートンに語りかける。
「人生の達人(MASTER OF LIFE)は、どんな時も自分らしく生き、自分色の人生を持つ」

それは、自らの人生への決意とともに、前途ある少年へのエールだった。

キートンはあの時の海の色、そして“人生の達人”の箴言を、いつまでも忘れずにいた。

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