野球漫画の金字塔「キャプテン」~谷口タカオ その白球にかける思い~④『激突!青葉学院戦』

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地区予選決勝で、善戦虚しく青葉学院に敗れた墨谷二中。

だが、青葉のなりふり構わぬ横紙破りもあり、特例で再試合が決定した。

ついに、谷口タカオの「キャプテン」としての集大成が訪れる。

青葉学院との再試合

立ち上がり、大舞台に浮足立つ墨谷ナイン。
打っては扇風機のようにバットが空を切る。
また、守ってはボールが手につかず、初回いきなり4点を失った。

観客席から失望の声が漏れる中、応援席の松下は立ち上がり、完全に雰囲気に呑まれた仲間達を応援する。

「頑張れ!頑張れ!墨谷!!」

本来はマウンドにいるはずのエース松下が悔しさや無念を押し殺し、孤軍奮闘エールを送っている。
その姿に「松下のために頑張ろう!」と一致団結し、落ち着きを取り戻すナインたち。
序盤4回までに0-6と大量リードを許すも、ムードメーカー丸井の3点ホームランが飛び出し、チームが勢いづく。

しかし、問題は先発投手イガラシの体力だった。
肩で息をするイガラシは、5回までが限界と自ら申し出る。

ところが、墨谷二中に悪夢が襲う。
ファールボールを追いかけた谷口がそのまま青葉ベンチに突っ込んだ。
敵の監督も思わず「ナイスファイト!」と声をかける闘志あふれるプレーだが、その代償はあまりに大きかった。
右手人さし指の爪が剥がれ、出血していたのだ…。

谷口とイガラシ

墨谷ナインに動揺が走る。

「これじゃあ…イガラシのリリーフは無理じゃないか…」

「なに言ってんの!サードだって無理ですよ!」

気色ばむイガラシに、谷口タカオはこう言った。

「な~に、サードなら大丈夫!指をかばえば何とか…」

包帯を巻く右手が何とも痛々しい。

「キャプテン、本当にやるんですか!?」

驚くイガラシに谷口は言葉を継ぐ。

「ああ…その代わり、イガラシに続けて投げてもらうしかないぞ」

「任せといてください!」

疲労困憊のイガラシはそう言うと、6回もマウンドに上がる。

本当に投げるのか?と捕手に尋ねられ、「最後の最後まで試合を捨てないっていうことを、キャプテンの谷口さんから嫌ってほど教えられましたからね」と答えるイガラシ。

人が良く人望もある谷口と、口が悪く才気走ったイガラシ。
正反対に見える二人だが、誰よりも谷口の野球に向き合う姿勢を学び取っていたのがイガラシだった。
尊敬するキャプテンの爪を剥がしながらも諦めない姿勢に、根性もののイガラシが意気に感じぬはずがない。
体力の限界をとうに超えながら、歯を食いしばり強力青葉打線を封じ込める乾坤一擲の力投。

私は生意気で口さがないイガラシが、どこか好きになれなかった。
だが、随所に見せる心意気に、次第に彼を認めるようになっていく。
青葉との再試合は、まさにイガラシの真骨頂を見た思いがした。

イガラシの必死の投球に、普段は犬猿の仲の丸井も奮い立ち、青葉のエース佐野に食い下がる。
もちろん続く高木も、同じ思いを秘めている。
気合十分に打席に立つと意表のセーフティバントを決め、丸井を2塁に送った。
クリーンナップに入り、イガラシと谷口の連続ヒットで1点返した。

ところが、再びアクシデントが墨谷二中に起こる。
谷口のヒットで3塁に向かう途中、イガラシがグラウンドに倒れ込んだのだ。
自らのもとに駆け寄る谷口に「す、すみません。足がもつれちゃって…」と謝罪するイガラシ。
小さな体を粉にして懸命に頑張る姿勢を崩さないイガラシは、7回もやマウンドに立つ。

2アウトになり、マウンドに向かう谷口。

「大丈夫か?イガラシ…」

「そんなことより痛むんじゃないですか?顔が真っ青ですよ」

「大丈夫か」と声をかける、爪を剥がし全く大丈夫じゃない谷口。
この期に及んで痩せ我慢をし、強がるイガラシ。
谷口も谷口だが、イガラシも輪をかけて意地っ張りである。
だが、そんなふたりのやり取りに熱いものが込み上げる。

最終回の死闘

9回表、2点差を追う墨谷二中の攻撃が始まる、そのときだった。
心配したイガラシが谷口の指を触ると、思わず絶叫した!

「指が折れてる!!」

慌てる墨谷ナインに谷口は厳命する。

「騒ぐな!いいかみんな、勝負はこの最後の攻撃にかかっているんだぞ!いいな、分かってるな!」

キャプテンの鬼気迫る迫力に圧倒される部員達。

島田と高木が出塁し、2死1・2塁の場面で迎えるは3番イガラシである。
バッターボックスにやっと向かうと、根性で同点タイムリーを放った。

そして、いよいよ4番谷口だ。
ところが、利き手の指が折れており、バットに力が入らない。
しかし、佐野が投じた2球目、詰まりながらも執念で内野の頭を超えるヒットを打つ。
2塁からほうほうの体を引きずるイガラシが、ホームに還ってきた。
これで7-6となり、墨谷二中が逆転する。

泣いても笑っても9回裏、青葉学院の攻撃で決着がつく。
戦前では4回までしか持たないといわれていたイガラシだが、とうとう最終回までやって来た。
なんという精神力だろう。
これで、まだ1年なのだから恐れ入る。

先頭打者をセンター浅間のファインプレーもあり、打ち取った。
今度はライトへの大飛球を、島田がジャンプ一番キャッチする。
イガラシを盛り立てる墨谷ナイン。

ついに、あと一人となり、青葉の監督は非情な采配を行った。
ファールでイガラシを潰すよう、命令したのである。

ひたすらファールでカットするバッター。
粘りに粘ってフォアボールを選び、同点のランナーが塁に出る。
後続のバッターも同様にファールで粘り、2死満塁となってしまう。

この1打逆転の場面で、登場するのはエース佐野である。
だが、徹底してファールを打つ。
そして、ついにイガラシがマウンドに倒れ込む。
とうの昔に限界を迎えていたが、完全に力尽きたのだ。

ピッチャー谷口

「イガラシ!」

「キャプテン」谷口タカオは脱兎のごとく、マウンドに駆け寄った。

そして様子を見に来た審判に、谷口は覚悟を決め交代を告げる。

「ピッチャーとサードを交代します」

つまり、谷口は自らがマウンドに上がると宣告したのである。

「そ、そんな無茶な!」

悲鳴にも似た声を上げるイガラシに、谷口タカオは作り笑いをしながらこう言った。

「な~に今のお前よりマシだ」

「でも、指の骨が…」

「添木もしてあるから何とか大丈夫だ。その代わり打たせていくから、みんな頼むぞ!」

痛む指もあり、ウォーミングアップなしで佐野に対峙する谷口。
投手が交代しても、相変わらずファールを打ち続ける佐野。

激痛の中、無理に笑みを浮かべる谷口に、キャッチャーは一方ならぬ思いを抱きつつ涙を堪えて捕球する。
だが、鮮血に染まる白球が目に入り、たまらず視界が滲んでいく。

「佐野!いい加減にしろ!それが名門・青葉の野球か!」

敵の応援席だけでなく、味方の観客からも強烈なヤジが飛び交った。
その声に後押しされるように、佐野は監督に直訴する。

「監督!打たせてください」

しかし、監督は佐野を一括し、訴えを却下する。
あくまでも、勝利こそが大切なのだと。

肩を落とし、力なく打席に向かう主将・佐野。
その姿を見て、監督は佐野を呼び止める。

「おい佐野、ちょっと待て。そんなに勝負してみたいか?よ~し分かった佐野!勝負してこい。お前の有らん限りの力で勝利を勝ち獲ってこい!」

パッと表情が明るくなる佐野。

「監督!ありがとうございます!

頷く監督に、佐野はさらに気合がみなぎった。
谷口も次の1球に思いの全てを乗せ、全力で投げ込んだ。
鮮血が飛び散るボールを叩く佐野。
だが、打ち損なってしまう。
力ない打球がセンターに上がった。

誰もがゲームチェンジと思った瞬間、センターの浅間がフェンス際で力尽きていた。
満塁の走者は2死なので、一斉にホーム目指して疾走する。
もし、キャッチできない場合はサヨナラ負けである。

外野手はもちろん、内野手も取りに行く。
足がもつれ次々と倒れていく中、ライトとレフト、そしてセカンド丸井が一斉に飛び込んだ。

審判が駆け付け、確認する。
静寂が支配するスタジアムに、審判の「アウト!」の声が鳴り響く。
最後は、丸井のグラブに納まっていた。

1点差を守り切り、死闘を制したのは墨谷二中だった。

まとめ

墨谷二中と青葉学院の再試合を紹介した。
この回は数あるキャプテンの名場面の中でも、個人的には最も心に残るものとなる。

野球センスの塊・イガラシのド根性。
才能や環境では見劣りしても、努力と諦めない心でエリート集団・青葉学院を倒した墨谷ナイン。
そして、勝利至上主義にもかかわらず、最後は選手の意志を尊重した青葉の監督。
どれもが胸に迫る名シーンである。

しかし、一番と言うならば「キャプテン」谷口タカオを置いて他にはいないだろう。
爪を剥がしただけでなく、指の骨折を押して出場し続け、ナインを動揺させぬため隠し通した不屈の精神。
そして、激痛が走る中、あまつさえマウンドにまで上がったのである。
名キャプテンは数あれど、私は谷口タカオを超える「キャプテン」を未だ見たことがない。

その無理が祟り、谷口は医者から2度と野球をできない旨、宣告されてしまう。
まさに、野球生命を賭けて戦った青葉との激闘。
しかし、谷口キャプテンは墨谷ナインにかけがえのない財産を残して去って行く。

それは努力の大切さと、決して諦めない姿である。
そして、あまりにも大きな代償と引きかえに得た勝利以上に大切なものは、墨谷ナインの魂に継承されていくのだった。


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