「闇に降り立った天才」赤木しげるの名言・名場面㉗ 
鷲巣編part12『修羅の鬼博打』

マンガ・アニメ




6回戦南3局。
あと残りわずかという場面で、鷲巣はアカギの待つ「北」を切ってしまう。
紆余曲折の末、ついにアカギは鷲巣から直撃をものにした…はずだった。

修羅の鬼博打

出るはずのない、鷲巣が暗刻で抱える「北」。
その牌が今…河に捨てられている。
その衝撃の事実に、後ろで観戦する仰木は夢を見ているようだった。

だが、さらなる驚愕の出来事が仰木を襲う。
なんと!赤木しげるは鷲巣が切った当たり牌をスルーしたのである。
たしかに、まだ1100ccしか血液を抜かれていない鷲巣から3200点を直撃しても、320ccしか採血できないため死には至らない。
しかし、この夢のような展開を考えれば、ここはひとまず和了っておき、オーラスに勝負をかけるべきだろう。

ところが、赤木しげるには別の景色が見えていた。
「北」という幻想の安全を手に入れた鷲巣は完全に緩んでいる。
その弛緩した鷲巣の気配に、赤木しげるの感性は嗅ぎ取った。
ドラの九筒を引いて来ることを。
つまり、勝負を司る流れ、潮目が変わったことを赤木しげるだけが感じでいたのである。
果たせるかな次巡、博運の風に乗った赤木しげるはドラを引き込んだ。
六筒と入れ替えた手牌はあっという間に倍増し、6400点に早変わりする。

そして、鷲巣は再び「北」を打つ。
今度こそ、奇跡の闘牌を成就させ、ロンの宣告をするかと思われた。
ところが、またもや赤木しげるは動かない。
もはや、理由がわからぬ仰木。
しかも、よく見ると、鷲巣のツモ番はもう無いではないか。
血液を大量に抜かれた影響で、アカギは鷲巣が海底だと勘違いしていたようだ。
なんという痛恨のミス!

迎えたアカギの最後のツモ番。
テンパイはしているが、ラスト1枚のあがり牌は鷲巣が持っている。
だが、赤木しげるはまだ何かを探していた。
そして、引いてきた五筒を捨てると、その牌を安岡がチーで鳴く。
この鳴きで、鷲巣に海底が回ってきた。

赤木しげるは、これを狙っていたのである。
“生”への妄執に取り憑かれた鷲巣は640ccの血液を抜き取っても、命を奪うことなど出来はしない。
西・發・ドラ1に海底までつけて満貫に仕上げ、800cc抜いてこそ止めを刺せるのだ。
さすがの鷲巣も年齢を考えれば、1100cc+800ccの合計1900ccを抜かれたら持ち堪えることはできないだろう。

そして、最後の難所をクリアし、安岡が鳴ける牌を乾坤一擲の闘牌で引き当てた赤木しげる。
細く儚い糸を手繰り寄せ、紡ぎ出したその様は、まさしく「修羅の鬼博打」であった。




海底

あまりにも濃密な南3局。
残すは鷲巣巌の海底のみである。

鷲巣はここでもアカギの現物牌を引かず、北に手をかける。
一瞬、異端者の嗅覚で“死に至る牌”の死臭を感じ取るものの、三度「北」を卓上に放った。

「長かった…!この南3局は長かった…何度もあがりを逃し、もう大丈夫と思った最後までこの試練。今度ばかりは骨身に沁みた。勝つためにはなんと多くの辛抱が必要なものかと…!」

安堵の言葉を漏らす鷲巣に、手牌を倒しながら赤木しげるは言い放つ。

「鷲巣…同感だ…!」

そこには、あるはずのない「北」が刺客のように潜んでいた…。




所感

圧倒的な不利の配牌にもかかわらず、黒牌という闇に紛れ、鷲巣に肉薄する赤木しげる。
そして、鷲巣が暗刻にする「北」をツモるや否や、周囲の喧騒をよそに聴牌を崩してしまう。
極めつけは鷲巣の弛緩した心を狙い撃ち、見事に「北」の降り打ちを誘いながら、あがりをスルーする胆力。
しかも、1度ならず2度までも…。
この修羅場、死の刻にあって見逃すことなど、誰ができようか。
常に命を捨てる覚悟を持ち、直感と意志を卓上に反映させ、己が矜持に殉じることができる赤木しげるしかいないだろう。
そんな赤木しげるなればこそ、か細く頼りない博運の糸を手繰り寄せ「修羅の鬼博打」を成就させたのだ。

思えば、いつも赤木しげるは確率や理ではなく、己が感性に命運をかけてきた。
「不合理こそ博打…不合理こそギャンブル」と言い切る赤木しげるは、この死の刻に際しても自らの信念に添い遂げた。

実は対局が再開する直前、生還を果たした赤木しげるは鷲巣に宣わっていた。

「南4局など…端からやる気なし!南3で死ぬ気さ!受け止めらるかな?おまえに…俺の死にゆく麻雀を…!」

その不退転の決意をこの土壇場で、有言実行してみせた赤木しげる。
まさに“神域の男”にしか打てぬ「死にゆく麻雀」であった。


アカギ-闇に降り立った天才 27(本ストーリー収録巻)

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