「闇に降り立った天才」赤木しげるの名言・名場面 ⑩ 
『今一時の気持ち』

マンガ




ニセアカギとの初対面で、神がかり的な才能を見せつけた赤木しげる。
その場面を目撃したニセアカギお抱えの組長が、どうしても“ふたりのアカギ”対決を所望した。
それを受け、一緒にいた治共々、黒ずくめの男達に拉致される。

ちょうど組の代打ちとしてニセアカギが麻雀勝負をしており、それが済み次第、本者との決着がつけられるはずだった…。

ストーリー

敵の代打ち・浦部に3連勝し、波に乗るニセアカギ。
最終戦となる4回戦も、問題なく押し切るかと思われた。

ところが、対局が始まる直前になって浦部が泣きを入れる。
このままではメンツが立たないと、最終戦はどちらかがトップを取るまでは、サシ馬を倍増して続ける条件を巧みに取り付ける。

浦部の話術に乗せられ、その条件を呑んだニセアカギ陣営は異変に気付き始める。
50万円のサシ馬を倍プッシュして100万で始まった最終戦。
両者とも、なかなかトップを取れない展開が続く。
100万から200万、200万から400万、800万、1600万…。
跳ね上がり続ける賭け金。

これこそが、浦部の狙いだったのだ。
ついに、サシ馬が3200万(現在の約3億)になったところで、浦部は突如牙を剥くのだった…。


アカギ-闇に降り立った天才 5(本作品収録巻)

格の違い

浦部は格の違いを見せつけ、ニセアカギの心を折り優勢を築いていく。
東1局及び2局の開始早々、両者の資質の違いが浮き彫りになった。

開始早々の東1局、ニセアカギは好調な出だしを見せる。
ツモ、手順とも滞りなく進め、9巡目に聴牌一番乗りを果たす。
だが、少しだけ悩ましい手牌になっていた。

万子の聴牌であり、三五六の形で持っている。
三万を切れば、四七万待ちの平和のみ。
六万を切れば、カン四万だが三色になる。

浦部が索子の清一模様であり、リーチを保留するニセアカギ。
そして、三万を切って一番無難な平和に受けた。
数巡後、ニセアカギは四万をツモる。

一見すると幸先良いスタートだが、ここにニセアカギの限界が露呈する。
もし、三色に受けてリーチをかけていれば、リーチ・ツモ・三色のマンガンだった。
だが、現実は平和・ツモのみの1500点で終わった。
つまり、ニセアカギは牌の片寄りを察知する嗅覚を持ち得ていないのだ。

それとは対照をなす浦部。
東2局で、その全貌を現した。
残り2回しかツモがない場面で、リーチに打って出る。
しかも、オープンリーチに加え、待ちも中と三筒のシャボなのだ。
さらに驚くことに、中は2枚切れている。

そして、浦部は最後のツモで引き上がったのだ!
オープンリーチ・ツモ・三暗刻に裏ドラが3つ乗って、親の倍満24000点である。
点棒の差もさることながら、心理面で立ち直れぬほどのダメージを受けるニセアカギ。
この瞬間、実質的に終了のフラグが立ったといえるだろう。

赤木しげるや浦部にあって、ニセアカギに無いもの…。
それは、“今一時の気持ち”に他ならない。

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今一時の気持ち

なるほど、ニセアカギは卓越した能力を持っている。
シャンテン数や牌効率など、確率に基づく計算をさせたら並ぶ者はいないだろう。
だが、勝負師として決定的な何かが欠けていた。

翻って、赤木しげるである。
ニセアカギとの邂逅を果たした場面、無謀とも思える挑戦を受け、見事に勝ちきった。
あのシーンこそ、偽者と本物の違いが顕著に表れている。

伏せられた9牌のうち3牌を引き、一索・四索・一萬の全てを引かなければならない、確率にして3%にも届かぬ圧倒的不利な勝負。
ところが、赤木しげるは針の穴を通すように3牌とも引き当てた。

なぜ、ニセアカギが「絶対にできる訳がない!」と言い切った奇跡を、赤木しげるは可能たらしめたのだろうか。
もちろん、天賦の才によるものが大きいことは否めない。
しかし、天稟だけでは事足りない。
それは、赤木しげるは常に“今一時の気持ち”で勝負に臨んでいるからだ。

この“今一時の気持ち”は自らの命を懸け、そして身を削る覚悟を持ち、自分の中の時間を濃縮していくことによってのみ可能となる。
その結果、単なる思考や集中を超越した境地にたどり着く。
つまり、どんな時も“己の矜持に殉じる魂の闘牌”を繰り広げる赤木しげるは、誰よりも濃密な時間軸に身を置くことができるのだ。

一方、ニセアカギは確率という信仰を金科玉条とし、勝負を長い目でしか見られない。
低いレートで長い勝負を行う、そんな大してプレッシャーのかからぬヌルい条件でしか真価を発揮できないのである。
3200万(現在の価値で3億)もの大金がかかる場面で、三色にも受けずリーチにも行けず、平和ツモのみに終わらすニセアカギ。
そんな彼はアカギとは対照的に薄い時間軸にしか身を置けず、確率を超えた牌への嗅覚も持ち得ない。

だからこそ、初対面で「おまえはギャンブルという土俵に上がっていない」と、アカギに吐き捨てられたのだ。

それにしても、我が身を振り返っても、いかに薄い時間にしか生きていないかを痛感させられる。
果たして一瞬でも、赤木しげるのような濃密な時間に身を置いたことがあっただろうか…。
そして、それは私だけではないはずだ。

“今一時の気持ち”。
赤木しげるまでとはいかなくても、少しでもこの境地に近づきたいものだが…。

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