読めば応援したくなる!「ハナバス 苔石花江のバスケ論」レビュー第2論

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「ハナバス」。
それは今、最も熱いスポーツ漫画といえるでしょう。

“陰キャ・コミュ症・人見知り”の三重苦を抱えながらも、友達のためには正面から真剣勝負を挑む“こけしちゃん”こと苔石花江。
そんな主人公がバスケ部のチームメイトと信頼関係を育みながら成長し、強敵に立ち向かう女バス青春グラフティ。

今回は練習試合とは思えない白熱の攻防を繰り広げた、爽英女学院との一戦をお送りします。


ハナバス 苔石花江のバスケ論(1) (マガジンポケットコミックス)

爽英女学院

新米顧問の勇み足で急遽、練習試合が決まる大神高校女子バスケットボール部。
その相手とは昨年、全国大会にも出場した強豪校・爽英女学院でした。
しかも、その爽女は大神高校がインターハイ予選3回戦で苦杯を喫した因縁の相手だったのです。

187cmの長身にしてキャプテンの東雲(しののめ)乙姫や副キャプテンの早乙女かぐやなど、強豪校の名に違わぬ多士済々なメンバーが大神高校の前に立ちはだかるのでした。




試合開始

ホイッスルが鳴ると、大神のエース藤咲音(えのん)は目を輝かせながら同じ2年の犬養香に言いました。

「ワンコ!やっぱええなぁ〜試合は!」

そして、緊張を隠せないワンコに続けます。

「瞬きせえんでやぁ〜3秒で先制点取ってくるわ!」

すると、ボールを持った藤はひとり、爽女陣営に切り込みます。
ゴール下、マークについたDFも何のその、無人の野をゆくが如くゴールネットを揺らしました。
有言実行ジャスト3秒で!
この藤のスーパープレイで勢いに乗った大神が、第1Qでは18-13とリードを奪います。

藤はなぜ、ワンコに声をかけたのでしょうか。
それは昨年のインターハイ予選、爽女に徹底的にマークされ、チームの敗因になったワンコの緊張を解くためだったのではないでしょうか。
もっとも、藤は掴み所のない性格のため、何も考えず心の命じるままに喋っただけかもしれませんが…。

第2Qに入り、爽女は東京都2位の実力を発揮します。
阿吽の呼吸で高度な戦術を駆使し、昨年同様、司令塔のワンコを潰しにかかります。
なかなかボールが繋がらない大神を尻目に、あっという間に逆転を果たしました。

そんな中、我らが苔石花江がコートに降り立ちます。
ワンコ先輩を、そして後悔を重ねたあの日の自分を助けることができる者へと変わるために…。

とはいえ、そこは“こけしちゃん”。
緊張のあまり、いきなりオウンゴールをかまします。
敵味方とも呆然とする中、花江はワンコの優しさに救われ、ワンコもまた花江を慰めるうち冷静さを取り戻します。

そこにエース藤も絡み、気づけば爽女と互角に渡り合っています。
ですが、なかなか点差は詰まらず、苦しい試合展開が続くのでした。




こけし無双

第3Qの途中、スタミナに課題を残す花江はベンチに引っ込みます。
初めての試合の感想を尋ねられ、花江は予想外の言葉を口にしました。

「だいたい分かりました。もう少し外から観て、仮説が合ってるようでしたら第4Qで逆転できると思います」

第3Q終了時、16点もの差を付けられているというのに…。
何という大胆不敵な発言なのでしょう。
もちろん、花江には成算がありました。
藤が得点を重ねているのに差が縮まらないのは、副キャプテンの早乙女かぐやがゲームをコントロールしているからでした。

花江はオドオドしながらも、勇気を出して提案します。

「私が10番(早乙女かぐや)にマッチアップしてよいでしょうか?5分いただければ、私が10番をコートから引きずり出します」

最終第4Qが始まり、早乙女かぐやと対峙する花江。
かぐやからすれば、さぞや小柄な花江はかっこうのカモに見えたことでしょう。
恐ろしい罠だと気付かず、早速1on1を仕掛けます。
次の瞬間、完璧なスティールを決められ得点を許します。
今度は体格差を生かし、インサイドで攻め込みます。
ですが、花江の巧みなディフェンスの前にオフェンスチャージを取られてしまいました。
これで、かぐやはこの試合3つ目のファールとなり、あと2つで退場です。
その後も、花江のディフェンス技術の前に翻弄されてしまいます。

そして、ついに花江の予言が成就しました。
リバウンドを制した大椛(おおなぎ)部長から花江にロングパスが供給されます。
花江はわざとスピードを落とし、かぐやが競りかけて来るのを待っています。
ようやくゴール下で追い付き必死のブロックを試みるかぐやのファールを誘発し、見事なボディコントロールでゴールまで決めました。
つまり、このワンプレーで得点とフリースローを獲得し、4つ目のファールをかぐやに与えたわけです。
残り8分で、もう1つもファールを犯せないかぐやは交代の憂き目に遭い、コートから引きずり出されました。

完璧なまでにゲームを支配していた、あの早乙女かぐやが苔石花江という冷徹な捕食者の餌食になった瞬間でした。
あまりの光景に早乙女かぐや本人はもちろん、大神高校の面々も呆気に取られてしまいます。

こうして花江が作り出した大きなうねりが爽女を一気に飲み込み、大神は残り1分14秒で逆転に成功したのでした。

バスケをする意味

たまらずタイムアウトを取る爽女。
浮き足立つ中、プロの練習に参加していた北条白雪が戻って来ます。
この白雪こそ、東京都2位の爽女が誇る「ゲームキャプテン」にして正PGなのでした。

白雪のみならず、かぐやも戦線復帰しベストメンバーでコートに立つ爽英女学院。
北条白雪が入っただけで、全く別のチームに様変わりします。

直前にスタッツを確認し、花江を警戒する白雪はドリブルで勝負はせず、流れるようなパスワークで大神を崩します。
最後は早乙女かぐやがスリーポイントを決め、いとも簡単に逆転してしまうのでした。
司令塔と思われた早乙女かぐやが実はシューターだったところにも、爽英女学院の底知れぬポテンシャルを感じます。

追加点を狙う爽女の猛攻を魂のディフェンスで防ぐ大椛部長。
その気迫が、ルーズボールを藤のもとに送り届けました。

しかし、一瞬の間隙をついて白雪がスティールします。
万事休すと思いきや、ひとり白雪をロックオンしていた少女。
その人物こそ、我らが苔石花江なのでした。
あの白雪が何もできない程の早業で、ボールを奪います。
試合終了の時間が迫る中、花江は爽女のDFふたりをあっという間に抜き去り、心の中で呟きます。

「ああ…きつい…ああそうか…私は10分もまともに動けないんですね…すごいなみんな…」

「そういえば私、高校生になってお友達ができて、チームにまで所属しています。それだけで十分なのに私は何を求めて走っているのでしょうか?わかりません。生物は勝ち負けが生死に関わりますが、人間はそんなことありません。ではなぜ…私はこんなに必死なんでしょうか?」

その刹那、ベンチから声を枯らして応援する小緑つぐみが視界の端に映ります。

「小緑さん…声…届いています」

懸命に追いすがる“美少女インフルエンサー”ハイネをダブルクラッチでかわし、花江はシュートを放ちます。
するとそこに、北条白雪の伸ばした指先が現れボールをわずかに掠めました。
花江の想いを乗せたボールはリングの上を回っています。

「お、お願い!」

転倒しながら、必死に祈る花江。

ですが無情にも、花江のシュートがゴールネットを揺らすことはありませんでした。




素晴らしき大神女子バスケ部

敗北の痛みを引きずりながら、花江はロッカールームに向かいます。

「ああ…やってしまった…私のせいだ。オウンゴールしなければ…最後のシュートを決めていれば…勝機はあったのに…私がぶち壊してしまった。チームに入れてくれたのに…」

うなだれる花江に、藤咲音が声をかけました。

「ふい〜こけしちゃん…自分えぐいな!」

それを聞いた、ワンコも続きます。

「それ!バスカンやばかったよね!しかも、爽女の3年からだよ!?」

部長ですら「初試合とは信じられないな」と感嘆の声をあげました。

しかし、花江は震える声で言いました。

「あの…でも…すみませんでした。わ、わ、私が外してしまったせいで負けてしまいました。オウンゴールも…その…どう償えばいいか」

すると、大椛環部長は花江の隣に座り、きっぱりと言い切ります。

「何言っている…バスケはチームスポーツ。敗北が誰か一人のせいなんてことは絶対にない!これは全員で積み重ねた結果だ」

部長の言葉を皮切りに、一人ひとりが反省の弁を述べました。

そして、異口同音にこの言葉を発します。

「私、強くなります!」

大粒の涙を流す花江に、藤は優しく語りかけました。

「ちゅーこっちゃ…次勝とや」

大椛部長も立ち上がり誓います。

「そうだ!次は勝つ!」

大神女子バスケ一同が円陣を組み、声を限りに叫びました!

「次は勝つ!!」

あれだけの活躍をしながら、自分を責める花江。
自己肯定感の低さの表れでしょうか。

そんな花江に温かい言葉をかける先輩たち。
特に、藤咲音のキャラは何とも得難いですね。
そして、これぞキャプテンという大椛環の名言。
彼女は、花江がオウンゴールした際に藤から「オウンゴールってドンマイで済みますっけ?」と問われた時も、力強く「済む!」と庇うなど、厳しくも温かいキャプテンシーにあふれた人物です。
爽女との試合もですが、このロッカールームでのやり取りに熱いものが込み上げるのは私だけではないでしょう。

もうひとり、忘れてならない人がいます。
それは、新米顧問の風間ゆかりです。
授業の準備などで忙しい中、バスケ初心者にもかかわらず部員全員の名前とポジションを覚えるなど、天然ながら生徒思いの良き先生であります。

そして、それを端的に表しているのが爽女戦後の一歩引いた振る舞いです。
ロッカールームで盛り上がる部員達を邪魔せぬよう、あえて扉の外で見守る彼女に指導者のあるべき姿を見た思いがしました。

読めばきっと応援したくなる!「ハナバス 苔石花江のバスケ論」。
この名作は必見です。


ハナバス 苔石花江のバスケ論(3) (本ストーリー収録巻)

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