懐かしき昭和の食卓『しーちゃんのごちそう』のススメ

マンガ




ときは、日本が高度経済成長を迎えた昭和30年代。
千葉県の房総半島を舞台に、その物語は展開します。

それは、まだ日本人が人情やお互い様の精神を持ちながら、貧しいながらも心豊かに暮らしていた頃のお話です。

「おはよう!スパンク」の作者・たかなししずえが送る、子ども時代の幸福で美味しい思い出がいっぱい詰まった1冊を召し上がってくださいな!


しーちゃんのごちそう(1) (思い出食堂コミックス)

『しーちゃんのごちそう』とは

本作品はコンビニコミック「思い出食堂」連載のマンガです。
古き良き日本の食卓を、主人公の女の子・しーちゃんの視点で描かれます。

食卓の様子だけでなく、往時の生活様式やご近所さん達とのハートフルな交流も、盛り込まれています。
そこには、どこか懐かしい日本の原風景がありました。

愛情いっぱいの両親や、気さくで心優しい近隣住民たちに囲まれて、しーちゃんはすくすくと素直に育っていきます。

当時の庶民の生活はまだ貧しく、コンビニやファミレスも無かったこともあり、ごはんと言えばお母さんが作る家庭の味が当たり前の時代でした。
今だって家でごはんを食べるのが主流だろう?という声が聞こえてきそうですが、その比ではありません。
文字通り、何でも自分たちで作っていました。

しーちゃんの住む房総半島にある町は、海に近いこともあり漁業が盛んでした。
なので、度々しーちゃんの家に、漁師さんが余った魚を持ってきてくれるのです。
たとえば、イワシを大量にもらうと摺り下ろして、つみれにします。
このように、今ではスーパーに行って調達するようなものも、一から手作りでこしらえてしまいます。

また、会合でご近所さん達が集まる場合も出前など取らず、ごちそうを手間暇かけて用意していました。
当時としては珍しく、しーちゃんのお父さんも料理の心得があったため、大勢の人が家に訪ねてくるときは一家総出で準備に大忙しです。
しーちゃんも皿を出したり、酢飯をうちわで扇いで冷ましたり、八面六臂の大活躍でした。

そして、炊飯器も無くかまどでご飯を炊いていたので、食事の支度も一苦労でした。
でも、かまどで炊くごはんはお焦げができ、しーちゃんはお焦げが大好きなので毎朝大喜びです。

そんな日々の営みに思わず頬が緩んでしまう、陽だまりのような心地良さ。
それが『しーちゃんのごちそう』の魅力だといえるでしょう。

一流シェフが監修した美味しさを食卓に!

善き人々

『しーちゃんのごちそう』という作品は、登場人物の全てが善人なのも特徴です。

しーちゃんは、ご両親が年取ってからの子どもということもあり、ことさら大切に育てられます。
特に、お父ちゃんは目に入れても痛くないぐらい溺愛していました。
そんな夫を時には窘めつつ、しーちゃんに対しても要所要所で締めながら深い愛情を注ぐお母ちゃん。

きっと、こんな両親の下だからこそ、しーちゃんは真っ直ぐに育つのでしょう。
しーちゃんを見ていると、まるで太陽の恵みを体いっぱいに浴びた新鮮なフルーツのようです。
どこを切り取っても、お日様の祝福で満たされた芳醇な味わいがする、あれです。

友達もみんな素直で純真な、我々が思う子どもらしい子どもたちです。
そして、ご近所さん達がまた良い人揃いなことも、しーちゃんにとっては幸運でした。
決して他人の子どもでも知らん顔をせず、困っていたら手を差し伸べる大人達を見て育ったことも、しーちゃんの優しさに繋がっているのでしょう。

しーちゃんは、本当に優しいんです。
普通の子どもは自分の大好きな食べ物を前にしたら、全部欲しがりますよね。
でも、しーちゃんは違うんです。
それが美味しければ美味しいほど、「これ、お父ちゃんやお母ちゃんにも食べさせたいな」と思うのです。
なので、たまの外食でごちそうが出た時も、店員さんに折に包んでもらい、お土産にして帰ります。
それを貰った時のお父ちゃんの“感謝カンゲキ雨嵐”ぶりも、本作の見どころといえるでしょう。

胃袋の囁きのみに耳を傾けて、ひたすら食べ散らかしていた私の幼少期とは、何と違うことか!
いや、子ども時代だけでなく、現在進行形かもしれません…(涙)

世間では一日一善をすすめます。
もちろん、それは素晴らしいことです。
ですが、ここは視点を変えて“一日一しーちゃん”は如何でしょう。

きっと、生きづらい世の中でささくれ立った心も、やさしさに癒されて安寧に向かうと思うのです。

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