読めば応援したくなる!「ハナバス 苔石花江のバスケ論」レビュー第3論

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「ハナバス」レビュー第3弾は、インターハイ予選・護円高校戦です。

この護円。
実は、揃いもそろって陰キャがレギュラーメンバーに名を連ねる、一見すると冴えないチームに思えます。
しかし、我々は試合終了までに素晴らしき好敵手であったことを知ることとなります。

読者の心揺さぶる、名将・穴熊監督率いる護円高校戦。
1回戦とは思えぬ激闘の記憶をお届けします。


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インターハイ予選

大神高校は全国大会を目指し、東京都予選に挑みます。
しかしながら、300校ものチームがエントリーする中、出場枠はたった2校という狭き門。
そんな厳しき戦いとは関係なしに、我らが苔石花江は相も変わらずコミュ障ぶりを発揮して、試合前に“ガサガサ”震えてます。

すると、対戦相手の護円高校がアップを始めました。
思ったよりも平均身長が高くないと安堵したのも束の間、突如アメリカからの留学生が現れ規格外のプレーを見せつけるのでした。




護円高校

ここで、護円高校のメンバー紹介をします。

監督  ・ 穴熊忠。(あなぐま ただし)
部長  ・ 銀冠ちま(ちま)
副部長・ 矢倉清香(ぐら)
その他・ 雁木巡(めぐ)  
   ・ 美濃ゆうな(ゆっぴ)
   ・ アレクサ・ダイヤモンド(アリー)

護円はチーム事情もあり、交代なしでこのメンバーだけで戦います。

みなさんお気付きでしょうか?
監督以下、アリーを除く全員が将棋の囲いの名称になっていることを!
ちなみに、2年のアリー以外は3年です。

さて、護円の陰キャぶりを端的に表すエピソードを披露しましょう。
それは試合開始直前のこと。
雁木巡(めぐ)は頭を抱えていました。

「あいつら、なんでアリーにビビってないんだよ〜!生の金髪だぞ!精神的に有利に進めると思ったのに…」

矢倉清香(ぐら)も続きます。

「4番の人(大椛部長)アリーより大きかったね…」

「バスケって結局、陽キャのスポーツなのかよ〜」

狼狽えるめぐに、美濃ゆうな(ゆっぴ)と銀冠ちま(ちま)が窘めます。

ゆっぴ「めぐ!落ち着いて!もうすぐ試合始まるよ!」
ちま「気負ってはいけない!練習したことをやれば必ず勝てるのであります!」

かくいう、ゆっぴとちまも汗をダラダラ垂れ流し、オロオロハラハラしながら必死に言葉を発する始末(汗)。
ちなみに、アリーもアニメオタクなのでコンプリートですね…。

こんな前途多難を思わせる護円ですが、“護円の絆は宇宙一”を合言葉に固い守りとチームワークで大神高校を苦しめていきました。




IH予選1回戦スタート

大神高校は爽女戦のあと、2年の伊達苺ことベリーがチームに復帰しました。
このベリー。
元々は陸上選手だったこともあり、底なしのスタミナとチーム一ともいえる脚力の持ち主です。

試合開始早々、ベリーはボールを持つと“スピードスター”の名に恥じぬ電光石火のプレーで先制点を奪います。
ベリーの気迫あふれるプレーで大神は主導権を握りました。

このまま一気に流れに乗るかと思いきや、絶妙のタイミングでタイムアウトを要求する穴熊監督。
己の不甲斐なさに下を向く選手達に、温かくも的確なアドバイスを送ります。

タイムアウト開け、護円は軽快なパス回しを展開し、最後はアレクサが得点を決めました。
完全に息を吹き返した護円は伝家の宝刀を切ってきます。
そう!“護円伝統”のゾーンDFです!
穴熊監督に基礎から徹底的に叩き込まれた3年に攻守の要アレクサが加わり、盤石のDFを完成させました。
その揺るぎなき堅陣を前に、大神の攻撃は全く刃が立たなくなります。

第1Q残り2分、5-12と劣勢を強いられる大神高校のピンチを救ったのはエース藤咲音でした。

「あかんあかん。攻めもせんのに、こんな動き回ったら疲れるだけや。残り2分は…エースに任せい!」

そう言うと、護円陣営をドリブルで切り裂く藤。
そしてゴール下、アリーをも個人技でかわし神速のゴールを決めてしまいます。

「ま、まじ…」

驚愕の表情で、めぐが呟きます。
いや護円一同、顔色なしであります。

その後も藤の独壇場と化し、第1Qが終わる頃には14-14と同点に追いついてしまいました。

真打ち登場

第2Qに入ると、流れが一気に変わります。
藤を止められないと悟った護円は徹底マークに作戦を変え、そもそもボールを触らせない戦術に切り替えます。
PGのワンコが機能せずチームとしてゾーンDFを崩せないことも重なり、第2Q終了時には10点もの大量リードを許しました。

ここで起死回生の一手を放つべく、“こけしちゃん”の投入です。
いつの間にか主従関係となったベリーと共に。

ところが藤の冷やかしを真に受けた花江は試合に出ることが怖くなり、圧倒的出場拒否で周囲をざわつかせます。
泣き叫び、猫背で髪もボサボサの花江を見たチーム護円は、にわかに親近感が湧きました。
“絶対陰キャだ!”と。

ともすれば重苦しい雰囲気に支配されがちな場面での、苔石花江という一服の清涼剤!?。
こうしたユーモラスな描写を織り交ぜる巧みさも、「ハナバス」の魅力ではないでしょうか。

ボロボロの花江を見た護円キャプテンちまは提案します。

「後半戦に備えアリーの体力を温存すべく、第3Qの攻撃は3年主体でいきたい」

穴熊監督は怪訝そうな表情で花江をチラりと見ながらも了解しました。
ただし、何かあったらいつでも今の戦い方に戻せるよう忠告も加えながら。

ちまは花江と対峙して思います。

「コート上で見るとより一層小さい…3年間でイヤというほど学んだ。相手の痛い所を突くのがバスケットボール!」

果敢に仕掛けるちま。
その刹那、花江は「待ってました!」と言わんばかりに笑みを浮かべると、驚異の反応スピードでいとも簡単にボールを奪取します。
そして、あらん限りの力を振り絞り前方にボールを投げました。

敵味方とも意図が分からない中、ボールに向かって疾走するスピードスター。
そう!これこそが花江とベリーが二人で密かに温めていた秘策だったのです。
群を抜くDF技術を誇りながらも体力の無い花江の代わりに、体力とスピードにおいては誰にも負けないベリーがパスを受け取りリングまでボールを運ぶ。
この単純ながら、効果的な作戦で護円との点差を少しずつ詰めていきました。




つぼみんデビュー

波に乗るベリー&こけし。
しかし、ここでアクシデントが起こります。
ベリーとディフェンスに行っためぐが激しく衝突したのです。
この接触により、鼻血が止まらないベリーは一端ベンチに退きます。
2点差まで詰め寄った大神にとって、あまりにも痛い退場となりました。

第3Q残り1分半。
選手交代を繰り返し、皆が疲労を隠せない中、唯一フレッシュなメンバー。
その小緑つぐみが、ついに公式戦デビューを果たします。
初心者ながら誰よりも練習し、誰よりも声を出し続けた“頑張り屋”つぼみんの登場には、感慨もひとしおです。

私は、対護円戦は第3Qまでと第4Qで描かれた景色は全く異質だと感じます。
そんな第3Qまでの戦いで最も心に残ったシーン。
それこそが、わずか1分半という短時間の中で見せた小緑つぼみのひたむきなプレーでした。

夢想だにしない出場に緊張を隠せない、つぼみん。
経験したことのない実戦の迫力に呑まれていきました。
そして、状況に追い付けない彼女は味方からのパスに気づかず、初心者であることを露呈してしまいます。
つぼみの折れかかった心は、風前の灯に思えました。

そのとき、チームメイトが駆け寄り、一人ひとりが優しいエールを贈ってくれたのです。
ギリギリ踏みとどまった、つぼみは自らに問いかけます。

「決めたんだ!あの時…考えろ!私にできること…私がやるべきこと!!」

すると、つぼみはベタン!と両手で床を打ち鳴らし、覚悟を決め肺の奥から声を出しました。

「ディフェーンス!!」

辺りの空気をビリビリと震わすような裂帛の気合。
ひとかたならぬ想いを乗せた声のディフェンスが、チームメイトを覚醒させます。
苦しい時間帯にもかかわらず、仲間たちの目に炎の如き光が宿った瞬間でした。
まさに小緑つぼみは今自分ができること、そして自分がやるべきことを実行したのです。
初めての試合。
それもインターハイ予選という大事な試合で観客が見守る中、仲間の支えと勇気を持って内なる自分に打ち克ったのです。

つぼみはプレーでもチームに貢献します。
攻め入る敵にも怯まずに声を出し続け、日々の練習で培ったディフェンスの構えを崩しません。
とはいえ、そこはバスケ初心者。
あっという間に抜き去られてしまいます。

ショックを受けながらも、つぼみは先輩から教わった”DFの5箇条”を思い出していました。

・一つ 声もDFの一部「黙らない」
・二つ 疲れても手は「下げない」
・三つ 姿勢は低く「跳ばない」
・四つ ボールとマークマンから目を「切らない」
・五つ!何があっても「止めない!」

その瞬間、フォローに入った春と競り合う敵に向かって追いすがります!
泥臭くDFの基本をなぞるよう相手を追い込みます。
そして、時間に追われた敵が焦った間隙を縫い、ダイビングキャッチでボールを奪います。
もちろん、エース藤咲音はそのチャンスを逃しません。

「つぼみ!」

声の方向に反転しながら、つぼみは必死にパスを出しました。

「ふ…藤先輩!!」

この咄嗟のやり取りの中、藤咲音は気付きます。

“初心者つぼみ 予想外の公式戦初出場。緊張で一瞬でなくなる体力。自分のことで精一杯 死に物狂いで取ったボール。そんな中聞こえたチームメイトの声。声のした方へとりあえず投げるのが普通。なのに…つぼみから遠いはずの利き手の左手にパスが来た”

「愛のあるええパスや!これだけは…このパスだけは絶対に…!絶対につなぐ!!」

藤だけでなく、チームメイト全員が同じ気持ちを共有します。
パスを受けた大椛部長の「つなぐぞ!!」の声を合図に、狼の群れの如く一斉に護円ゴールを襲います。
しかし、そこは“DFの鬼”護円。
素早いチェックで潰しにかかりました。
ボールを持つ春は、ここしかないピンポイントにパスを供給します。
阿吽の呼吸で、そこに駆け込む夏凛。
浦西中時代からの息の合ったプレーは健在です。
得意のドリブルでゴールまで疾走する夏凛に、アリーが止めに入ります。
ゆっぴが大椛部長をマークするなど、護円のDFには付け入る隙がないように思えました。

そのとき、小緑つぼみが護円陣内に飛び込んで来ました。
「フリー!!」という掛け声と共に…。

虚を突かれた護円に、一瞬の綻びができました。
その隙をつき、夏凛から藤にパスが通ります。
完全フリーの藤咲音から放たれたシュートは美しい放物線を描きながら、完璧なまでにゴールネットを揺らしました。
大神は逆転に成功し、第3Q終了です。

それにしても、小緑つぼみの頑張りには感銘を受けずにはいられません。
強豪・護円からボールを奪ったのみならず、動かぬはずの身体を気力ひとつで突き動かし、チームのために囮になるつぼみん。
基本という凡事を徹底し、ディフェンスで学んだ「最後まで止めない、諦めない」という精神をオフェンスでも発揮するとは…。

私は彼女の活躍を見るにつけ、花江が第2論で語っていたことを思い出しました。
花江は人生で初めてできた友達に対し、こう言います。

「小緑さんには…女子バスケに一番必要な才能が既に備わっています。だから絶対!絶対に向いていると思います…だって、女子バスケは仲間のためにするスポーツだから」

まさしく、この試合のための伏線としか思えません。
とはいえ、こんな初期の頃から小緑つぼみの本質を見抜く苔石花江も恐るべしではありますが…。

                                  ※第4論レビューにつづく…


ハナバス 苔石花江のバスケ論5(本ストーリー収録巻)

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